たゆたうたたか。


「ほら、これ貸してやるよ」
「え?」


彼が渡してくれたものは、定期入れ。
それは花都駅も含まれた範囲の定期。


「え!?ちょっと、いいよ!」
「うるっせえなー。貸してやるって言ってんだから素直に受け取れよ?」
「なっ....だって、初対面だよ!?もし悪用とかされたらどうすんのよ?」
「山道で気持ち良さそうに爆睡してた奴がそんな悪質なことしねえだろ」
「でっ....でも」
「返してくれるなら別にいいって。しつけー」


そう言うと彼は草原に寝転ぶ。

生意気な子だと思ってたけど、親切だよね。だって普通は見ず知らずの他人にこんなことしないもん....。感謝しないと。


「あ、分かった....。じゃあ、お借りします....。」
「せっかく天気良いから散歩してたのに台無しだよ」


散歩....。
そういえばさっきまで状況が読めてなかったから今気付いたけど。
ここ、すっごく綺麗な場所だなぁ。
ふたつ隣の駅に来れば、こんな場所もあるんだぁ。
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