♔タカラモノ♔
初対面な気がする。
さっき、あって言ってたけどあたしのこと知ってるのかな?
「傘、ないの?」
え、え。話しかけてきた。
「う、うん。今日晴れって聞いたから」
「あ、それ俺も。天気予報あてになんねーよなっ」
彼は笑いながら言う。
ほらね、やっぱりあたしと同じ人いるんだよ。
「君、六組の子でしょ。よく廊下で見かける」
「えっ!そうなんだ。ごめんあたし初めて見たかも」
そう言うと、彼はやっぱりか〜と言って笑い飛ばした。
「馬村晴です。よろしく」
「倉木佳夜です」
全く気づかなかった。
毎日その廊下を通っているけど、きっと彼と目を合わせることはなかった。
そんな事があって、あの日からあたしは
晴を目で探すようになった。
いつ通るんだろう。
どこ通るんだろう。
「何、佳夜怖い!最近挙動不審だよ」
同じクラスの舞が佳夜に言う。
確かにキョロキョロしちゃってたけど、そこまでかな。
「晴〜」
ん??んんん?晴?晴って言った?
どこだろ。
誰が呼んでるんだろ。
あたしは咄嗟に反応した。
そして呼ぶ方向に目を向けると、そこに彼はいた。