ブルーローズ
「そんな顔しちゃって、どうせ陽希のことでも考えてたんでしょ」

ちぃさんは意地悪そうに笑う。

「今日、本当はあの元節操無しとお泊りデートだったらしいじゃない」

「あ、やっぱり知ってたんだ。ちぃさん」

「あいつ、休みよこせってごねるんだもの。子供みたいに佐竹が宥めすかしたのよ。うちの事務所に来る前のこととは言え、自業自得のくせに」

「ちぃさんてば、ハルに厳しいね」

ちぃさんは自分の髪を鬱陶しそうにかき上げると、私を軽く睨んだ。

「ミッチーが物分かり良すぎなの。ちゃんと文句の1つも言ってやりなさいよ」

「…意外。ちぃさんなら、そんな小さいこと気にするなって言うと思ってた」

「貴女が全然気にしない女ならね。でも、違うでしょ? それにね、責められない方が辛い時だってあるわけ」

わかる? なんて言いながら、何杯目かも分らないシャンパンを口にするちぃさんは、本当に大人の女性だ。

2歳しか違わないのに、いつまで経ってもちぃさんには敵わない。


「あれ? そう言えば今日は下ネタどうしたんですか? いつもなら絶好調な辺りなのに」

私がヘラッと笑うと「今日は全然酔えないわ」なんて彼女は口を尖らせた。



夜も更けてシャンパンが赤ワインに変わり、ちょっとした一言が無性に楽しくて仕方無くなった頃、控えめなブザー音が鳴った。

ルームサービス? ワイン追加したっけか。
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