ブルーローズ
「あの2人って……そうなの?」

私が隣に立ったままの陽希を見上げると、すでに彼の視線はこちらを向いていた。

「うん。多分。あんまり詳しくは、知りたくも無いけど」


陽希はそっと私の首筋に顔を埋めて呟いた。

「……社長に借り作っちゃったけど、会えて嬉しい」

いつもならすんなり陽希の背中に手を回すことが出来るのに、今夜はやはり戸惑った。

あの記事が出てから会うのは初めてで、メールとも電話とも違う、ナマ陽希。

口や指では『割り切ってる』なんて簡単に言葉を紡いでいた、そんな自分が嘘クサイ。

全然割り切れてないわ、私。


「……美知佳さん、なんか良い匂いがする」

「ちぃさんに、全身エステ誘われた」

陽希はバスローブから覗く二の腕をすりすりと撫でた。

「ちょっ、くすぐったいって」

「社長、俺のために美知佳さんのことツルツルにしてくれたのかな」

「ちっ違うよ!! ハルの所為でツルツルになったけど、ハルのためじゃない」

私は強い口調でそんな言葉を吐くと、陽希の胸元をドンと強く押した。

「美知佳さん……怒ってる?」

「う、それも違う」

陽希は私を引っ張って、さっきまでちぃさんと飲んでいたソファに座らせた。

彼も隣りに座るのかと思いきや、私の足元に正座する。

「美知佳さん、怒って良いよ。俺ここで聞くし」

「そんな、お説教を聞く生徒みたいにされても困る」
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