あの日、君に伝えたかった




パンを食べる彼を見ながら、私は鞄の中から絆創膏を取り出した。

身だしなみとしてママから持たされたもの。

ご丁寧に消毒液もセットされている。



「少ししみるかもしれないけど、我慢してね」



しゃがみこみ、彼の傷に消毒液をたらし、絆創膏を貼った。

にしても、どこでこんな怪我を・・・。




手と足、全ての傷口に消毒液をたらし、絆創膏を貼った。

絆創膏の数と傷口の数が合っていて良かった。



凄くしみるはずなのに、彼は何も言わなかった。

表情一つ変えないし、涙も流さない。



「・・・ご馳走様でした」



ふと、彼が呟いた。




「良かった」



私はニコッと微笑む。

彼は私をじっと見つめ、口を開いた。







「そんな作り笑顔して、何が良いんですか?」



つく・・り・・・えがお・・・?


私のこの笑顔が?










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