あの日、君に伝えたかった
「私、作り笑顔してたかしら?」
「してましたよ」
確かに、意識して口角上げていたかも。
でも、まさか気が付くなんて。
「鋭いんだねー」
「いや、普通は気が付きますって」
「それが気が付いた人いないよ。
あなたが初めて。
名前、なんていうの?」
「ボクに名前なんてありません」
「名前がない?
可笑しいでしょ、それ。
私は槇野芽衣。
メイって呼んでね」
「メイさん、ですか?」
「さん付けかよー・・・」
私はハハハッと笑った。
「その笑顔、作ってませんね」
「え?あ、本当だー!」
「あなたにはそう言う笑顔がお似合いですよ」
そう言った彼も優しく微笑んだ。
「じゃあさ、私が名付けても良いのー?」
「構いませんよ。
名前ありませんしね」
「じゃあねー・・・。
夜斗、夜斗は?」
「夜斗?どうしてですか?」