あの日、君に伝えたかった




両親が死んだことを知らないボクは、ただ待っていた。



「ほら、やっぱりいたよ、息子がさ」

「ほ、本当にいたんですね」



突然家の中に入ってきた、見知らぬ男2人。

ボクは得体の知れない“何か”に襲われた。



「お前、名はなんという?」



聞かれたけど、答えられない。



「話せよ、この餓鬼っ!」

「話せないんじゃないんですか?」


男がボクに紙と鉛筆を渡してきた。


「名前、書いてくれますか?」



ボクは字さえも知らない。



「おいおい・・・どうしたんだこの餓鬼は」

「俺に聞かないでくださいよ・・・」

「・・・もしかしてこいつ、話さないんじゃなくて、話せなくもないんじゃねぇか?」

「・・・どういう意味ですか」

「つまりだな。
こいつは話さないんじゃない。
声がないわけでもない。
話し方を知らねぇとか?」

「話し方を知らない、ですか?」

「こいつ、完全な育児放棄にあっているんだろ?
言葉を知らなくても可笑しくないんじゃねぇか?」

「そんな奴、存在するんですか・・・」

「存在するぜ?
こいつの親父がそうだったからな」






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