あの日、君に伝えたかった
「あ・・・よる、と」
思わず驚いて後ずさる。
鍵を見ていたことがばれたら、マズい展開だもの。
鍵を見ていたってことは、出ようとしていたと捉えても可笑しくない展開だものね。
「どうされました?」
「あのねっ・・・えと・・・違うの。
別に出ようとしたわけじゃないの」
普通の人だったら出たいと思うけど。
生憎私は普通の人じゃない。
普通の人が持つ思考を、私は持ち合わせていない。
出ようと思わない。
出ても、私は幸せじゃないから。
「何を慌てているのかわかりませんが。
ボクが出すと思うんですか?
もし思うのなら、その思考間違っていますよ?
ボクはあなたを出そうなど思いません。
あなたは一生ボクのモノです」
・・・狂っている。
この人、確実に。
「夕ご飯が出来ましたよ」
にっこりと微笑む彼から、狂っているとは思えない。
この微笑みは、凄く優しいから。
大人しく備え付けのテーブルに座ると、彼は目の前に温かいグラタンを置いた。
そしてそっと、
「良い子ですね、メイさん」
私の頭をなでた。