擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
その後、普段着に着替えた私は早めに帰宅することを皐月に伝えた
駅までの道のりを結城君と並んで歩いていると、自分達が教師と生徒だということを忘れそうになる。
「結城君、皐月が来る前に何を言いかけたの?」
結城君の今日の言動がいつもとは少し違っていて、何か揺らいでいるような苛立っているような気がしてならなかった。
「気になる?」
「そうね。何だか、いつもの結城君じゃなかったから」
「いつもの俺ってどっち?」
「ふてぶてしい方」
「マジか。先生にとってそっちが俺なのね」
何が可笑しかったのか、結城君は小さく笑う。
単純に私にとって、優等生の結城君よりも不良な結城君の方が関わり合いが多いせいだ。
「先生は俺に構われるのは嫌なんだよね?」
「そうだね。ほっといてほしいと思うよ」
「でも、先生見てると、何か、構いたくなるんだよね」
真剣な顔で「何か」と曖昧にはぐらかされると妙にドキドキしてしまう。
いい加減、結城君の意味深な言葉には慣れたいと思うのに、それがなかなかできない。