擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「そんなにからかいがいがある?」
「んー、それもあるけど」
正直者ね。
ここまでくるといっそ清々しさを感じる。
「俺の予想外なことしてくるから、単純に好奇心がくすぐられるのかも」
それはそれで嬉しくもない気がする。
「俺、真剣に何かをやったことが無いって言ったでしょ?」
突然話の方向が変わって対応に遅れた。
ああ、本当のことだったのか、と疑ってしまったことに少しだけ罪悪感を感じて、「うん」と頷いた。
「勉強は真剣にやってることじゃないの?いつも1番でしょ」
「勉強は、授業聞いてたらだいたいわかる。俺、努力しなくても何でもできちゃうから」
「堂々とした嫌味だね」
「何でもできちゃうのが、俺の悩み。贅沢な悩みでしょ?」
結城君の完璧な笑顔が初めて崩れ、ぎこちなく口元を引き伸ばしていた。
「謙遜しても本音を言っても嫌味にしか聞こえない。本気になってもならなくても同じ事。そうなると、本気になるのが馬鹿みたいになってくるんだよね」
無理矢理笑おうとする結城君が吐き出す言葉は静かながらに苦しさを語っている。