擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~


結城君が黙ったままなことに気づいて、やってしまったな、と思った。

呆れ果てて声も出ないのかもしれない。

「ごめんね?こんな話で」

「こんな話って貶す話でも無いでしょ」

「そう、かな?」

「うん」

そして、また沈黙してしまう。

何だか調子狂うな。

結城君なら、この辺りで皮肉たっぷりな感想が返ってくると思ったのに。

「大丈夫?」

「何?」

「てっきり、馬鹿にされるかと思ったんだけど」

「・・・俺、そんな軽薄に見られてるの?」

いつもとは違う結城君の反応に驚かされて、次の言葉が思い浮かばない。

「でも、ごめん」

「え?」

何で結城君が謝るんだろう。

不思議に思いながら、結城君の横顔を凝視した。

私を呼び止めた時の、あの困った顔だ。

「どんな言葉を言ったらいいか、わかんない」

「へ?」

「何?その、間の抜けたリアクション」

じとり、と結城君は私を睨み付けて口をへの字に曲げた。

「屁理屈も、心のこもってない慰めも無限に言えるんだけどな」


何気に、落ち込んでる?

私の腕を掴んで、困った顔をしながら何かを言いたそうにしていたのは、私にかける言葉を探してもいい言葉が見つからなかったから?


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