擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~

駅のホームに続く、階段を下り切る前に発車のベルが鳴り始めた。

意地でもその電車に乗りたくて、閉まろうとするドアに体を滑り込ませる。


なんとか、セーフ・・・。

飛び込んできた私を不審な目で乗客が見つめ、おまけに「駆け込み乗車は大変危険ですので、お辞め下さい」と車内アナウンスに注意された。

恥ずかしくなったので、隣の車両に移動しようとした時、ぐんっ、と服が引っ張られ、後ろに引き戻された。


うわっ、最悪っ。

振り向くと、カーディガンがドアの間に挟まっている。

それも結構な分量。

周りに気づかれないように、カーディガンを引っ張ってみたけれど、どうやらぴったり挟まれているみたいで、抜けてはくれない。

いつもよりも満員では無い電車がこんなにも疎ましく思ったのは初めてだ。

満員電車なら私が何をしてようと気にするのは周りにいるごく一部の乗客なのに。