擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
文化祭出し物の申請用紙を提出するため、生徒会室をノックした。
できれば近寄りたくなかったんだけど、と思いながら、野球部の指導がある浪川先生には頼めるわけがなく、自分で提出しにやって来た。
結城君が偶然いないか、結城君以外にも誰かいれば・・・。
「ああ、先生か。決まったの?2-A」
私の淡い願いも虚しく、生徒会室にはいつもの眼鏡をかけた性悪な生徒会長のみ。
「チュロスね。まだ全部出てないけど、平気だと思うよ」
申請用紙を確認し、「受理しました」と眼鏡を中指で押し上げた。
「また、衣装作りやるんだって?」
「情報が早いことで・・・」
「文化祭の情報は全てここに集約されてくるからね」
生徒会の担当教員はいるものの、統率力も判断力も際立っている結城君がほとんど牛耳っていると言えるらしい。
担当教員自ら指導しなくとも、結城君が先回りしてしまうみたいだ。
だから、相談役、または報告内容を伝えるくらいの名ばかりの責任者だったりするわけだ。
これを聞くだけでも、結城君のすごさが伝わってくる。