擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
店員に運んでもらった日本酒に口をつけ、ああ、やっぱり美味しいな、と満足する。
「先輩に再会できたのは嬉しかったし、ご飯食べにも言って、楽しいなって思ったよ?」
「うん」
「でもまだね、チクチク痛むわけよ、思い出すと」
「うん」
「誘ってくれる先輩の真意がわからないんだよね。だから、正直2回目はどんな気持ちで行ったらいいのかわからなくなってる」
佐久間さんにとっては些細なことで、とっくの昔に忘れてしまったことかもしれない。
「自惚れてんのかなぁ、私」
1回目の誘いは懐かしさと、社交辞令もあったんじゃないかと思う。
だけど、2回目の誘いはそうじゃないように思った。
「直接、確かめてみるしかないんじゃない?先輩に」
「直接、か」
「今の話を聞く限り、先輩は雅のこと、結構気になってるんだと思う。自惚れてはないと思うよ」
そう言われると、アルコールとは違った火照りを感じるのがわかる。
調子いいな、私って。
「失恋したけど、それは中学の時の話」
「うん・・・」
「10年も経ったけど、またチャンスを神様が与えてくれたんじゃないかなぁ」
皐月は言って、「神様は流石に恥ずかしいか」と照れ笑いを浮かべてグラスに口を付けた。
神様が与えてくれたチャンスか。
皐月は照れ臭そうだったけど、私は意外とその言葉が気に入ってしまった。