擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~


お酒の美味しい店を見つけました。
来週なんてどう?


私が佐久間さんに連絡を取る意思を持った途端に、なんともタイミングの良い佐久間さんからのメッセージ。


大丈夫です。


素っ気ない言葉になってしまったけど、正直なんと返していいかわからない。

佐久間さんからの文書を何度も読んでみて、その中に隠れている真意を探り出そうともしてみた。


そんなことをしてみても、佐久間さんがどんな気持ちで私を誘ってくれるのかはわからなかった。

来週が待ち遠しいような、怖いような。

複雑な気持ちで、ひとまず眠りについた。




佐久間さんが探してくれた「お酒の美味しい店」はブルーの間接照明で雰囲気を作った落ち着いたバーだった。

またもや、今までの私では無縁だったに違いない空間。


でも、その雰囲気には恥じないように今日もこの日の為に選んだ服を着て、美原先生から貰ったグロスを塗った。


更に女の子らしく、カシスオレンジを頼んでみるとグラスの淵に半月オレンジがくっついた状態で出てきた。


「じゃ、乾杯」

と、佐久間さんがニッコリしながら軽くグラスを合わせた。

グラスに口を付けると、オレンジがそれを阻止するように鼻の頭に触れる。

これは取って飲むのか、それとも絞ったりするのか・・・、いまいち用途がわからない。

「どうかした?」

「あ、いえ何でも」

佐久間さんがクスッと小さく笑う。

カシスオレンジに付いたオレンジに翻弄されているなんて、変な女だと思われたかもしれない。

最終的に、オレンジをグラスに付けたまま、甘いカクテルを一口含んだ。


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