擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~

「へぇ、文化祭?」

中学生の時のことを覚えてますか?

そう切り出すチャンスは何度かあった。

チャンスが巡ってくる前は絶対訊く、と意気込んでいるのだけど、いざチャンス到来となると、尻込みしてしまう。

「今は準備とかで大忙しなんです」

このヘタレめ!ちゃんと、次は訊くんだ!

残っていたソルティードックを勢い良く飲み干した。

「懐かしいなぁ。準備が1番楽しかったりするんだよな。夜遅くまで学校に残るって行為が無性にワクワクしてさ」

私のグラスが空くのを見て、佐久間さんが次を促したので、また同じ物を頼んだ。

「わかります。コンビニで買ったパンで夜ご飯を済ませて、作業しながら他愛無い話をして、すごく楽しかったです」

主には皐月とだけど、いつも一緒にいるのに、どんなに時間があっても足りないくらいだった。

こうして、何年か経った今でもあの時の気持ちが鮮明に思い出されるのは、その時がとても短い泡沫のような存在だからかもしれない。


それを、今は知らない無邪気な生徒達も何年か経った後に、かけがえのない思い出となっていつまでも心に残るだろう。


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