擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~


「あーあ、これからちゃんと普通にしていられるかなぁ」

柏木さんは机に突っ伏して深く溜息を吐いた。

「来月には生徒会選挙もあるし、会う回数は減るじゃない」

「でも、そうなったら気まづくなってそれっきりになりそうだもん。せっかく作った関係を無かったことにはしたくないんだよ」

その言葉はチクリ、と胸に痛みを与えた。

佐久間さんにフラれてから、佐久間さんが誘ってくれたシュート練習には途中から行かなくなった。

佐久間さんが早く卒業してくれればいいと思った。

佐久間さんを好きだったことも思い出も忘れてしまいたいと思って、心の奥底にその気持ちを押し込んだ。

今だって同じことを繰り返そうとしている。

この前、佐久間さんと気まづくなってしまって、そのまま連絡を取っていない。

体は大人になっても、心の中は何にも変わっていないことを突きつけられたような気がした。

フラれても逃げるのではなく、どう関係を築き直していくか考えている柏木さんの方が私より大人だ。


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