擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「明日、会ったら笑っておはようって言うだけでいいんじゃないかな」
柏木さんに教えられている私がこんなことを言うのはおかしいけれど、落ち込んでる柏木さんを放っては置けない。
「その次は?」
「その次、は・・・」
ヤバイ。思いつかない。
おはようって言ったら、きっと結城君はおはようって返してくれる。
それから結城君が話を続けてくれればいいけれど、沈黙になってしまったらそれも気まづい。
「許容、オーバー・・・」
机に突っ伏し、泣きたくなった。
最後まで導いてあげられなくて、ごめん。
「ふっ・・・ははっ、雅ちゃんがパンクしたー」
後頭部に笑い声を受けて、起き上がるといつもの笑顔で柏木さんが声を出して笑っていた。
「ま、なんとかなるよね。まずは、おはようって言ってみる。今ちゃんと、笑えたから、大丈夫な気がしてきたよ。ありがとう、雅ちゃん」
「私は何もしてないのに」
「ここで話を聞いてくれたよ」
今度は私が泣きたくなってしまったから、慌てて唇を噛んで堪えながら、柏木さんのいつもの笑顔に安堵した。