擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
店の白いドアを開けるとカラン、カラン、と小気味良い音が鳴る。
女性店員に通された席に着いて、安堵する。
ネットで見た通り、可愛らしい、いかにも女子が好きそうな空間だ。
メニューが運ばれて来ると、テーブルに置かれたロウソクに明かりが灯された。
暗めの照明とテーブルごとに置かれたロウソクはゆらゆらと揺れて特別な空間を一層彩る。
「やっぱり女の子だなぁ。男同士なんていないもんな」
ああ、ごめんなさい、佐久間さん。
普段は女同士で行かない様な場所に行ってます、私。
嘘をついても、佐久間さんに「女の子」と言われたことは正直言って嬉しい。
運ばれてきたグラスを合わせて、一口ずつアルコールを含む。
「連絡、もう来ないかなって、ちょっと思ってたんだ」
「あ・・・、ごめんなさい。この前は」
「そういうつもりで言ったんじゃなくて。ほんと、あれは俺が悪かった。・・・俺の下心、バレちゃっただろ?」
ど、どう反応すればいいんだろう。
「え、えと・・・」
「で、芹沢からまた誘ってくれた。これって、期待していいってことだよね?」
「え!?あ、・・・」
「ぷっ・・・ははっ!すげぇ、顔赤いよ」
「こ、これはアルコールのせいで・・・!」
「嘘つくなよー。こんなもんで顔色変わらないだろ、芹沢は」
勢い余ってグラスを飲み干して、ハッとする。
佐久間さんは口元に手の甲を当てて、笑いを堪えて肩を震わしている。
「なぁ・・・」
突然、声のトーンが変わって、目を細めた佐久間さんに見つめられ、ドキッと胸が高鳴った。
「付き合ってくれないか?俺と」
時が止まったかのような沈黙が流れる。
佐久間さんはそう言ったまま、私をじっ、と見つめている。