擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
次のクラスに向かっていると、結城君が歩いてくるのが目に入った。
今日は結城君のクラスの授業は無くて、ホッとしていたのに、これじゃあ無意味だ。
クラスメイトと話しながら向かって来ていて、まだ私には気づいてない様子。
すぐ側の理科室に体を滑り込ませてやり過ごすことにした。
ドアを閉めて壁に背中をつけて、一息吐く。
こんなに意識して、馬鹿みたいだ。
普通にすれ違えば、何も気にしていないように見えたかもしれないのに。
ああ、早く通り過ぎて・・・。
「やっぱりね。先生だと思った」
「ぎゃあ!?」
理科室のドアが開かれ、顔を出した結城君は中に入って来てドアを閉めた。
「避けるってことはさ、少しは気にしてくれてるってこと?」
結城君が一歩近づくと、私は二歩後退り。
それを繰り返して壁際に追い詰められて行く。
「ここに用があったの」
「数学担当の先生が理科室に何の用?」
「今度の授業で使えないかな、って・・・」
「なんだ。俺と2人きりになりたくてここに入ったわけじゃないんだ?」