擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「理想があるけど、なかなか辿り着けなくて、ジタバタしてる感じが俺と同じ」
「結城君の理想って、何?」
「それは、教えない」
「・・・そこまで言ったら教えてよ」
「考えてみれば?」
「そんなの、わかるわけないじゃない」
ただでさえ、結城君って何を考えているかわからないのに。
「考えてよ。俺のこと、いっぱい考えて?そして、俺しか見えなくなればいいよ。そしたら、先生も生徒だからとかどうでも良くなるから」
「なっ、何なの、そのキザなセリフ・・・!本当に高校生なの!?」
「高校生じゃなかったら、とっくに先生とどうにかなってるよ」
「どうにかって・・・!?」
「聞きたいの・・・?」
伏し目がちにした目を流し、小さくクスッと笑ってみせた結城君の顔が色っぽ過ぎて、ダメだとわかっているのに、ドキドキしてしまう。
「今、何想像したの?」
「してないっ!!」
「うっそだぁ。言ってみなよ?してあげるから」
「も、もう、行かなきゃだからっ・・・!!」
笑っている結城君を押し退けて、理科準備室を勢い良く開けると、そこに立っていた柏木さんがびくり、と肩を跳ねらせた。
そして、私の顔と後ろにいる結城君に視線をゆっくりと動かして、また私と目が合う。
大きな目を更に広げて、この状況をどうにか納得の行く事実と結びつけようとしているように見える。