擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~

11月の中旬に生徒会選挙が行われた。

結城君や柏木さんら2年生はこれからの受験勉強専念のため、任を降りて新しい生徒会が発足される。


辞任する生徒達は一人一人壇上で挨拶をする。

柏木さんはいつもの明るい印象を封印し、緊張した面持ちで全校生徒に思いを伝えた。

あれから、柏木さんに変わった様子は特に無かった。

私の見る限りは私と結城君のことを勘ぐっている様子は無いと思う。

もしかしたら、あの後にも結城君がフォローしてくれたのかもしれない。



最後に、堂々と壇上に立った結城君は教師達も聞き入る立派な辞任の挨拶を述べた。

「いやぁ、素晴らしかったですね」

結城君が礼をすると、大きな拍手が起きた。

浪川先生は自分が育ててきたかのごとく満足そうにしながら手を叩く。

「そうですね。立派でした」

その言葉に嘘はない。

結城君がどれだけこの仕事に力を注いできたのか、全てを知らない私にも伝わって来た。

少し、目頭が熱くなってもいた。


壇上を降りて、教師陣に向かって姿勢の良い礼をする。

顔を上げた結城君と目が合った。

視線を逸らしたくなる反射を押さえ込み、口元に笑みを湛えて拍手を送った。

他の教師達と同じように。

視線を逸らしたり、避けたりして妙に意識するからいけない。


私は今まで通り、生徒に接していけばいいのだから。


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