擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~


向かい合って座ってご飯を食べ始めるのも、最早日課となっている。

「今日すれ違ったのって結城君のお母さん?」

「そうだよ」

「若くて最初、わからなかった」

「あー、本当の母親じゃないから」

「え?」

「再婚相手だよ」

結城君を産んだお母さんとしては若いとは思っていたものの、再婚相手となれば納得だ。

「中学の時に父親が再婚して、俺の母親になった人。その後、2人の子供ができたから実は俺には3歳の弟がいるんだよね」

「そうだったんだ。可愛いだろうねぇ」

「じゃないの?俺はあんまり関わらないようにしてるからわかんないけど」

「実家に帰ったりしないの?」

「しない。俺がいない方が気楽でしょ?今日だって来なくて良いって言ったんだけどね。後ろめたさでもあるのかなぁ。俺が自分で家出ただけなんだから気にすることないのに」

学校から実家も遠くはない高校生の結城君が一人暮らしをしていることを不思議に思っていたけど、そういう理由だったのか。

結城君は特に何とも思っていないようで、ご飯を口に運んでいる。

気を遣って自分から家族と離れることに、寂しさなんかは感じなかったんだろうか。



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