擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~


ふと、視線を上げた結城君と目が合う。

「先生が考えてる事だいたい予想つくんだけど」

「う、嘘」

「寂しくないの?とか、それでいいの?とか、そんなところじゃないの?」

言い当てられて、咄嗟に何も返せず、結城君はふっ、と笑って「やっぱりね」と見透かしたように言う。

「一人暮らしの方が気楽でいいよ。それに、一旦グレた時にも父親は俺の事見捨てなかったし、一人で育てるのも苦労したろうしね。やっと幸せになったんだから楽しんでほしいよね」

「優等生でいるのは、お父さん達に心配させないため?」

「まぁ、そうかも。俺の事でもう煩わせたくないかなって」

結城君がそう思っているのなら、私が同情したりするのはおかしなことだ。

結城君家族の事を少しも知らないんだから。

でも、結城君の事を誰よりも思って、なりふり構わず心配してくれる人の存在は?

本来なら一番は親になるんだろうけど、結城君はそれを望んでいない。

だとしたら・・・


< 259 / 266 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop