擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
卒業式が終わると外に出た卒業生、在校生が学校をバックにそれぞれ写真を撮り合い、名残惜しさもあってか帰って行く生徒の姿は少ない。
「雅ちゃーん、一緒に撮ろー!!」
柏木さん達、元2-Aの女子達数人が駆け寄って来て囲まれる。
最早、雅ちゃん、と呼ばれることに抵抗が無くなってきている自分に驚く。
理想の教師であろうとするあまり、本質では無いことにまでこだわってしまっていたのかもしれない。
私が作り上げる理想の教師を生徒に押し付けるのではない。
生徒達が私の事を先生と認めてくれること。
ただ、それだけで良かったのに。
「あ、肇君!撮ってー!」
通りすがりの結城君を捕まえると、柏木さんは自分のスマホを渡して駆け戻って来て、私を中心に女子達がポーズをとる。
副担任をしていた時の私との思い出話をそれぞれひとしきり話してから、また別の誰かを見つけて写真を一緒に撮っていた。
春休みが終わったら、彼女らの姿は学校のどこにもなくて、また新しい生徒達が入学してくる。
1年ごとにそれを繰り返す。
彼女らは進学したら就職したり、大きな環境の変化に揉まれて行くことだろう。
そんな中ではすぐに私達のような存在は忘れてしまうかもしれない。
残される方が、物悲しさをより感じてしまうのではないかと思う。