擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~


何度指摘しても、何人かの生徒は私を「雅ちゃん」と呼ぶし、敬語を使わない生徒も多い。

自分が高校生だった頃にも周りの生徒が気に食わない先生だとか、尊敬できない先生に対して勝手に可笑しなあだ名をつけてため口で威圧的な態度をとっていたことを思い出す。

大学を卒業して2年。

まだまだ未熟なことは理解しているけど、生徒達にも私の未熟さや浅はかさが見破られているようでへこむ。

「いいじゃないですかー。生徒と仲良くって」

「私は嫌なんです。ある程度は教師と生徒の線引きは必要だと思いますから」

「芹沢先生って、私より年下なのにしっかりしてて尊敬しちゃうなー」

呑気に笑う美原先生を見ていると、私の悩みなんて小さなことなんだろうか、と思えてきてしまう。

美原先生は今年30歳になるらしいが、そうは見えない若々しい肌とおっとりとした口調が見た目年齢をわからなくさせている。

最近の流行にも敏感で女子生徒と同じ目線で会話ができるし、通勤時に着てくる服はどれも華やかで私の知らないブランドの服を着こなし、女子生徒から憧れの目を向けられている。

そのファッションセンスと穏やかな性格から男子生徒には可愛い、と言われていてどちらにも人気の先生ではある。


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