擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
教師と生徒の過程
衣装を作ることになったからと言って、日々の業務が減るわけではもちろん無い。
いつものように仕事を終えて、それから衣装作りに取り掛かる。
睡眠時間を削らないと、業務をこなしながらでは正直厳しかった。
だからといって、手を抜くことなど考えられなかった。
演劇部の面々が本気で演劇に向き合う姿や部長の思いを聞いてしまっては、一度引き受けたことを中途半端にできるはずもない。
ある程度出来た衣装は着る予定の部員に1度着てもらい、微調整を施しながら完成させていった。
「先生凄いっ。イメージ通りだし、衣装もしっかりしてて縫い目も綺麗」
衣装係のもう1人が感嘆の声を出し、その子にも教えながら自分の作業もこなしていった。
「それじゃあ、また来るね」
「さよならー!雅ちゃん!」
「こらっ!」
毎日演劇部に顔を出していたら、最初は引っ込み思案の生徒ですら私のことを「雅ちゃん」と呼ぶようになってしまった。
生徒とコミュニケーションをとれている証拠だ、と美原先生は言うけれど友達のようになってしまうのはやっぱり違う気がする。