擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
深く息を吐くと、視界が霞んでぐらり、と揺れた。
そのまま立っていることが出来なくなって、壁に手を付き、目頭を揉んだ。
だいたい原因の予想は付いていたから、そのまましゃがみ込んで目眩がおさまるのをじっと待っていた。
「先生?」
顔を上げると、目を丸めている結城君が駆け寄って来て、私の前に屈んだ。
「何?具合悪いの?」
「平気。ただの寝不足だと思う」
「何それ・・・」
眉根を寄せて何だが苛立っている結城君は深く溜息を吐いて手を差し伸べた。
「とりあえず、保健室行こう。立てる?」
「ちょっと、今は無理、かな。こうしてれば楽だから、大丈夫」
「教師が生徒に気を遣わせないでくれる?いいよ、乗って」
結城君は広い背中を私に向けて両手を後ろに回した。
「い、いい!ほんっとうに大丈夫だから」
「・・・もう、面倒くさいなぁ」
結城君は突然、私の肩と膝の裏に手を入れて、私が混乱しているうちに持ち上げた。
「なっ、何するのっ!」
「暴れないで。落とすよ?」
「お、降ろしてっ」
「ダメ」
私は結城君にお姫様抱っこされたまま、廊下を進んで行く。