擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~


今年の春に実家暮らしを卒業し、ずっと憧れていた1人暮らしを始めた。

運良く、新築の割には安価な8畳ある1Kを借りることができたので、この際自分が満足する部屋を目指して張り切って家具を揃えた。

最初の内は部屋を綺麗に保とうと、心掛けていた。

だけど、仕事をしながら家事をすることの大変さをたった3ヶ月で思い知ることとなった。

帰って来るのは夜遅いし、体にも疲労が溜まっている。

休日でもやらなくてはならない仕事があったりするし、無かったとしてもゆっくり寝ていたいと思う。

散らかった部屋を見ただけでげんなりしたけど、その光景を視線の端に追いやった。

髪をほどき、クリーム色のブラウスと紺色のパンツを脱ぎ捨てて、朝、ベットに脱ぎっぱなしにしたままのジャージに足を通す。

Tシャツに腕を通しながら冷蔵庫からビールを取り出して、まずは一口飲んで息を吐き出す。

「ぷはーっ」

学校では生徒の見本であろうとしているので、着る服には常に清潔感を意識してビジネスカジュアルが基本。

姿勢を正してきびきびと歩くことを心がけ、いつでも緊張感を持っているつもりだ。

そうして、自分の教師像を作りあげているわけだけど、本来の私はそこまでできた人間では無い。


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