擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
ホールの敷地外で運良くタクシーを捕まえられ、学校まで直行してもらうことにした。
「タクシーなら余裕で間に合う」
安堵の息を吐くと共に緊張が緩んだのか、腕時計を確認すると、背もたれに体を預けた。
「ありがとう」
「何のこと?」
「私、伊丹先生に頭きて、ちゃんと周りを見れてなかった」
「ああ、そういうこと。俺もあの先生に腹が立ってたから丁度良かった」
「ありがとう。結城君が居てくれて、本当に助かった」
結城君は窓の外を流れていく風景を眺めながら「ん」と小さく答えた。
私だったら、あの状況を見て一瞬の判断で全員に的確な指示ができたかわからない。
いや、多分できなかった。
あの場所で指示をしなくてはいけなかったのは伊丹先生か私だったはずなのに。