擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「俺の1番嫌いなことは努力が無駄になること。俺が働いたのに無駄にさせてたまるか」
ぼんやりと外を眺めていたように見えたのに、発した声は思ったよりもはっきりとしていて何の迷いも無かった。
本当に、良くわからないよ。
そう思ったら、自然と笑いが込み上げて来た。
「ああ、もう。また損得勘定」
「当たり前でしょ。そこ、笑うとこ?」
だって、メリットが無いと動かないと言いながら、真っ先に自分が衣装を取りに行くと名乗り出た。
舞台が台無しになれば、演劇部にとって相当の痛手だ。
だけど、直接的には結城君の損にはならないはず。
舞台裏で指示していた結城君にはメリットなんか考えてる余裕なんかなかったんじゃないかと思う。
今、私に言ったことは単なる後付けなんじゃないかな。
本当の結城君はどこにいるんだろう、とますます結城君がわからなくなってしまったけど、それも悪くはない。