擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
学校の正門前でタクシーを止め、階段を一気に駆け上がり、部員から多分ここにある、と言っていた場所に真っ先に向かった。
「あった!」
「よし、すぐ戻ろう」
演劇部の部室に置き去りになっていた衣装を見つけ出し、丁寧に抱えて再び走り出した。
学校を出て、広い通りに出るとタクシーを捕まえて行き先をを伝える。
このまま行けば間に合う時間だ。
そう、思っていたのに、大通りまでタクシーが出ると、信号が変わっても全く車が進まなくなってしまった。
「事故でもあったかねぇ」
のんびりとした運転手の声が逆に私の気持ちを焦らせた。
「回避できる道は無いですか!?」
「この辺りは無いねぇ。事故現場を抜ければスムーズになると思うけど、どれくらいかかるか」
「ここで、降ります」
迷う様子も無く、結城君が宣言したので、私はここまでの金額を払ってタクシーを降りた。
「走って間に合う?」
「ここで立ち往生してるよりはマシだ」
結城君が風を切って走り出したので、私もその背中を追いかけた。