擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「ま、待って・・・!ゆうきくっ・・・」
必死で結城君の背中を追っていたけど、もう体力の限界だ。
咳き込みながら、膝に手をついて肩で息をし、結城君を呼び止める。
運動不足の体には市民ホールまで走る体力には足りなくて、更にはこの暑さが体力を無情に奪っていく。
「結城君が、持って先、行って・・・!」
戻って来た結城君に衣装を渡すと、それを受け取った結城君は私の手を掴んだ。
「先生が間に合わなきゃダメだ。もう少しだから、頑張って」
いつもの涼しげな目には余裕なんてなくて、ただ真っ直ぐに私を見つめていた。
それなのに、いつになく優しい声色で私を励ましてくれる。
「舞台を成功させたいんでしょ?」
結城君も顔や首筋に汗を滲ませて、必死に演劇部を救おうとしている。
純粋に、演劇部の舞台が成功することを願っている。
私だって、それは同じ思いだ。
「成功させたいっ」
「だよね」
小さく笑った結城君が「行こう」と促したので、私は大きく頷いて、また駆け出した。