擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
そして、物語は進んで行く。
舞台が暗くなり、軽快な音楽と共に明るくなると、私達が持って来た衣装を着たヒロイン役の生徒が中央に立ち、他の生徒もそれぞれの衣装をみにまとって演技をしていた。
ヒロイン役が最後にセリフを言い、全員が天を見上げた状態で静止して幕が静かに下りていった。
大きな拍手と共に会場の明かりが点けられる。
私の拍手は会場から沸き立つ拍手に紛れ込んで自分の耳にすら届かない。
ラストしか見られなかったけど、舞台が大成功を収めたことは明白だった。
目頭が熱くなって、瞳から涙が一筋頬を伝って雫を落とした。
「よかった・・・」
勝手に出て来た言葉は、すぐに大きな拍手の中に溶け込んでしまったけれど、結城君にだけは聞こえていたみたいで、ポツリ、と返してくれた。
「うん。頑張ったね」
「ほんと。皆すごかったね」
「俺が言ったのは先生ね」
穏やかな口調は私の心の中にじわり、と染み込んで行くように溶けた。
「はは、泣いてんの?」
「う、わっ」
ポカン、と結城君を見上げていたけど、自分が泣いていたことを思い出して慌てて背中を向けた。
私達は舞台裏に戻って抱き合って成功を喜んでいる演劇部の輪に溶け込んだ。
「ありがとうございました!!」
部員達が揃って私達3人に向かってお辞儀をした。
そして、感極まって泣いている生徒を見ていたら、また涙がぶり返して来て一緒になって泣いてしまった。