擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
「生徒と同じように泣いて喜んで、さっきの見てたら、そういう先生もいいなって思ったけどね、俺は」
また、鼻の奥がツン、としてきて、油断したら涙が出てきそうになった。
さっきまで泣いていたせいで、涙腺も緩くなっているに違いない。
「もう、ヤダな・・・。生徒に慰められてるし」
全部、見透かされているし。
理想に反すると、すごく落ち込んでしまうことも、自分で決めたポリシーが逆に自分を追い詰めていることも。
「素直に慰められてればいいんじゃない?舐めてるのは先生の方。勝手に俺達を子供扱いすんな」
結城君は私が教師と生徒はこうあるべきだ、と言う話をすると決まって関心を無くしていた。
そうか。結城君はこれをずっと言いたかったのか。
7年だ。この子達との年の差は。
法的には大人では無くても、大人よりもしっかりとした考えを持っている生徒はいくらでもいる。
それを、教師と生徒という関係や年齢で振り分けて、彼等の言葉を聞き流していたんじゃないだろうか。
教師が生徒を教育しながら、教師が生徒から何かを学んで、そうやって教師は成長して行くのかもしれない。
「そっか。舐めてたのは私の方か」
自然と、小さな笑みが口元を緩ませる。
教師に向いていないか判断するのは、もう少し経ってからでもいいのかもしれない。