擬態化同盟 ~教師と生徒の秘密事~
人だかりの後ろの方で結城君とその友人が順位表を眺めながら他愛の無い会話を交わす。
「俺にも教えろよ、そのヤマー!」
「企業秘密だから」
「この野郎っ!」
なんだ、割と普通の男子高校生やってるじゃないか。
結城君の首に腕を巻きつけた友人は首を絞める真似をして、結城君が「ギブギブ」などと笑ってじゃれあっている。
ああやって笑ってはしゃいでいれば可愛いのに、本性はとんでもない性悪だ。
まぁ、この前はそんな結城君に助けられてしまったのだけど。
思い出すと気恥ずかしくて、でも嬉しい。
小さく笑うと、それに気付いたかのように結城君がちらり、と後ろに目を向ける。
結城君はセルフレームの眼鏡越しに目を細め、してやったり顏で唇を横に引く。
何よ、その悪い笑みは。
隣の友人が話しかけると、結城君はさっきまでの無邪気で真面目な男子高校生に変貌した。
まさか、私の心の中を悟ったわけでは無いだろうけど、結城君が「貸しだから」と私に言ってきたような気もした。