四角いジャングル
そして今、両者はリングに立っている。

「青コーナー、185センチ110キロ…三沢ぁ、光秀ぇぇぇっ!」

コールに、会場から多数のブーイングと、僅かな三沢コールが起こった。

「赤コーナー、181センチ107キロ…大谷ぃっ、晋二ぃぃぃぃぃっ!」

コールされると、三沢とは対照的に割れんばかりの歓声が巻き起こる。

ここがアウェーである事をまざまざと思い知らされる。

三沢は無言のまま、青コーナーで背を向けてロープの感触を確かめながら。

「ファイッ!」

ゴングと同時に振り向いた。

ゆっくりとマット中央に歩み出て、円を描くように動く両者。

視線はお互いを見据えたまま、出方を窺うようにジリジリと間合いを詰める。

ある程度距離が詰まった所で、大谷が手を伸ばしてきた。

その手に、三沢がゆっくりと片手で組み合う。

もう片方の手も、がっちりと組み合って。

「ぃやぁぁあぁあぁっ!」

両者胸を合わせ、まずは力比べ!

全身の筋肉が震えるほどに、パワーとパワーの押し合いを演じる。

歯を食い縛り、顔面を紅潮させ、渾身の力で組み合う大谷と三沢。

対決の行方は。

「んぉぉぉおぉぉぉぉっ…!」

やや体格のいい、三沢に軍配が上がった。

じわじわと、コーナーポストに追い詰められる。

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