四角いジャングル
ヒールホールドは膝を左右に捻るという技の性格と人間の膝関節の構造上、筋力による抵抗が殆どできず、技が極まると一瞬にして膝関節の靭帯(主に内側側副靭帯または外側側副靭帯)や半月板等を破壊する為、危険であるとされてブラジリアン柔術など多くの格闘技において禁止技となっている。

そんな危険な技を、想像だにしなかった方法で仕掛けてくる。

桜庭の異名『IQレスラー』の名に相応しい、クレバーな入り方だった。

激痛に絶叫する猪瀬。

ギリギリの角度まで、桜庭は猪瀬の足を捻り上げている。

あともう少し力を加えれば、猪瀬の膝靭帯は破壊されてしまうだろう。

それでも、レフェリーのギブアップの問いかけを否定する猪瀬。

前の試合の武藤同様、猪瀬は決してギブアップを口にしない。

若手レスラーである桜庭が、ニュージャパンのトップである猪瀬をここまで追い詰めるなどと、誰が予想しただろう。

苦悶の表情を浮かべる猪瀬。

しかし彼は。

「なっ?」

何とヒールホールドを仕掛けている桜庭の片足を摑み、足首を手を使って固定し、捻って極める!

アンクルホールド。

猪瀬は関節技の最中に、自らも桜庭に対して関節技を仕掛けた!

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