四角いジャングル
アンクルホールドは、自分がとられている足と同じ方向(右足を攻められているなら、右方向に)に回転するという返し方がある。

しかし桜庭もヒールホールドを極めている今、その方法は不可能。

どちらかが技を解かない限り、両者とも脱出は出来ない。

関節技の『極めっこ』状態。

お互いに苦悶の表情を浮かべながら、相手の足を捻り上げる。

レフェリーがせわしなく動きながら、両者にギブアップを問い掛けるが、無論どちらもギブアップはしない。

相手がギブアップするまで、技は解かない。

意地の張り合いが続く。

「ぎ…猪瀬さん…ギブアップして下さい…!」

歯を食い縛りながら、桜庭が言う。

「このままだと…猪瀬さんの膝靭帯は破壊されますよ…!」

それは猪瀬に対する最後通牒のつもりだった。

だが。

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