四角いジャングル
何が勝てないものか。

現にここまで、猪瀬は三沢に対して有効な技を一つも出せていないではないか。

自分にそう言い聞かせ、もう一度足攻めを実行しようとタックルを仕掛けた三沢は。

「ぐっ!」

猪瀬の平手打ちを頬に食らい、出足を止められる。

その一瞬の隙を突いて、猪瀬は延髄斬り!

「っ……!」

まさしく延髄を断ち切られたような、強烈な衝撃。

一撃で意識が朦朧とする。

そんな三沢に、猪瀬はナックルパート!

数発拳を叩き込んで、三沢を打ちのめし、更にその場跳びのドロップキック!

溜めのあるドロップキックを食らい、三沢は後方に倒れる。

猪瀬は三沢を引き起こして前屈みにさせ、相手の頭部を自らの腋の下に抱え込む。

その体勢から、相手の首を支点にして後方へブリッジして投げる!

フロントネックチャンスリードロップ。

猪瀬が若手時代に『アントニオ猪瀬』のリングネームで試合をしていた頃に、『アントニオドライバー』という名称で使っていた技である。

見た目以上に全身の筋力を要する技ともいわれており、猪木はこの技を多用した影響で腰を痛め、数年で封印した。

三沢に対して使用したのが、実に数年ぶりだ。

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