四角いジャングル
首を極められた状態でマットに叩き付けられた。

『受け身の天才』三沢も、頸椎にダメージを受ける。

下手をすれば首を折られてしまう所だ。

そんな彼に。

「運が良かったな」

猪瀬は言う。

「上手く受け身をとれなければ、お前死んでたぞ」

「……っ!」

その瞬間、三沢の背中を寒気が襲った。

「お前ら若手はどうだか知らないがな…日本のプロレス黎明期を支えてきた俺達のようなレスラーは、リングの上で死ぬつもりでプロレスやってんだ…投げたら相手の頭を砕くつもりで、極めたら相手の骨を折るつもりでやってる…ギブアップしないなら折れるまで捻じり上げるつもりでな…」

膝を痛め、足を引き摺っている猪瀬。

それなのに、三沢には猪瀬がとてつもなく凶暴な手負いの獣に見えた。

「どうだ三沢…お前は俺を殺す気があるか?」

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