四角いジャングル
「ヘイ猪瀬、ギブアップか?」

レフェリーが猪瀬に問い掛けるものの。

「ノー…!」

人差し指を立てて横に振り、否定のジェスチャーをする猪瀬。

それを見るや、藤原は更に猪瀬の腕を絞り上げる!

「ぐぁあぁあぁあぁぁっ!」

会場中に響き渡る猪瀬の絶叫。

藤原の脇固めが深く極まっている証拠だ。

藤原は道場でのトレーニング中に、何人もの練習生の腕を、この脇固めでへし折っている。

折ろうと思えば折れるのだ。

本来の可動域を無視した角度にまで捻じり上げられる猪瀬の腕。

しかし。

「藤原、ロープだ!」

レフェリーが叫ぶ。

ロープブレイク。

プロレスのルールの一つで、技をかける側、かけられる側、いずれかのレスラーが手足でロープに触れるか、体の部分がロープ外のリングサイドエプロンに完全に出た場合は、技の解除が求められる。

対戦相手の両肩をマットに押しつけ、レフェリーが3カウント数える『フォール』の場合は、カウントはストップされる。

完全に極まって逃げられない技でも、ロープブレイクすれば解除できるのだ。

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