四角いジャングル
チャンスだった。

大谷は桜庭を引き起こし、素早く背後に回り込んで両手で腰回りをクラッチする。

そのままブリッジしつつ、後方に反り投げ!

ジャーマンスープレックス!

まさかデビューしたての新人レスラーがジャーマンを打つとは思わなかったのか、会場からはどよめきが上がった。

前にも述べた通り、ジャーマンスープレックスは観客がプロレスラーの力量を見る基準となる技でもある。

大谷のジャーマンは、投げきった後のブリッジが素晴らしく、とてもデビュー戦のレスラーとは思えなかった。

ブリッジをしたまま相手のクラッチを離さずそのまま固めてフォールする大谷。

勝ちをもぎ取るチャンス!

レフェリーがカウントに入るものの。

「っ!」

桜庭は体を捩ってフォールの体勢を崩した。

「くそっ!」

思わず毒づく大谷。

だが戦えている。

全く歯が立たない相手ではない!

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