四角いジャングル
二人がかりのハイジャック式パイルドライバーによって、スタミナを誇るフライもすぐには立ち上がれない。

「大谷、チャンスだ!」

猪瀬が指示を出し、自身はカットに入ろうとしている藤原を卍固めに捕らえる!

大谷もまた、グロッキー状態のフライを背後からクラッチしていた。

ジャーマンスープレックスの体勢。

しかし、まだ技の完成度の低い大谷では、フライや藤原のようなベテラン選手からフォールは奪えないのは先程の攻防で実証済みだ。

ベテラン選手ほど受け身が上手く、ダメージを最小限に抑える事が出来る。

ならばどうするか。

考えた大谷は。

「!?」

フライの後方からフルネルソン(羽交い絞め)の状態に捕らえる!

こうする事で両腕の自由が利かなくなり、結果受け身が取りづらくなる。

その状態のまま、大谷は後方に反り投げ、そのままブリッジで相手をフォールする!

ドラゴンスープレックス!

実戦の中で試行錯誤し、大谷が会得した、今後のプロレス人生の中で長きに亘り使い続ける事になるフィニッシュムーブの誕生の瞬間だった。

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