四角いジャングル
マイクを握り締め、サングラスを外した蝶野は猪瀬に視線を向ける。

「猪瀬、戻って来たぜ、えぇコラ猪瀬ぇっ!」

ニュージャパンのトップを呼び捨てにし、ダーティーで凶暴な発言をする蝶野。

「今日はな、ニュージャパンに宣戦布告に来たぜ!」

その発言で、会場は割れんばかりのどよめきが起こる。

険しい表情で猪瀬達が睨む中。

「懐かしい顔を連れて来たぜ…」

蝶野はまず、隣に立つ男が深々と被っている、トレーナーのフードを取る。

そこから覗いた顔に、会場は更なる驚愕の声を上げた。

武藤 啓介(むとう けいすけ)。

蝶野と同期でニュージャパンに入団した選手で、プロレスに必要なパワー、スピード、テクニック、センスを極めて高い次元で併せ持った選手として活動を続け、その素質故に『日本マット界の至宝』と言われる。

しかし格闘技路線に重心を移したニュージャパンでは自身の実績なども潰される事になると考え、フロントスタッフの5名と共に ニュージャパンを突如退団。

現在はオールジャパンプロレスに入団していた。

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