近くにいた王子


「ちょ、ちょ、ちょ、待てっ!」


俺は急いで閉まるドアを押さえる。


「…だから何? 今さゆ来てんだけど」

「紗雪来てんの? ならちょうどいいわ」


紗雪とは陽人の彼女。

中2の時から付き合ってて、高校が離れて今、ちょっとすれ違い気味らしい。


「何? ちょうどいいって」

「紗雪にも話聞いてもらおうと思ってたから。おじゃましまーす」

「ちょっ、待て。ここで待ってろ」


そう言うと陽人は自分の部屋へと走っていった。

アイツら…そういうことか。

陽人と紗雪の関係の深さを知って、俺は更に惨めな気持ちになった。




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