近くにいた王子


戻ってきた陽人に促され、部屋へと入る。

そこには床にちょこんと座る、紗雪の姿。


「光くん、おはよー」


満面の笑みで、俺に笑いかける。


「こんな朝からどうしたの? どうせアユ絡みでしょー」


…バレてら。

もしかしたら、紗雪はアユから彼氏ができたのを聞いていたのかもしれない。


「アユが…あのバカアユがっ!」


ちくしょー。

なんかイライラしてきた。


「朝から起こしやがって何かと思えば、」


せっかく気持ち良く寝てたってのに。

あれはねーだろ。

…ダブルの意味で。


「彼氏ができたとか言ってきて」


しかも幸せそうに。


「俺の気持ちはどうなんだよ…」




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