近くにいた王子


俺は家に帰ると、部屋に閉じこもった。


何をするわけでもなく、ベッドの上に寝転んで。

天井を見つめながら思い出すのは、アユのことばかり。


男っ気の全くなかったアユ。

顔は可愛いからよくモテてたけど、

仲良い男といえば俺と陽人くらいで。

1番アユに近いのは、ずっと俺だと思ってた。


だから、安心しちまってたんだ。

アユに彼氏なんてできるわけないって。


そんな、漫画みたいなことが、アユに起きると思わねーだろ?


って、これじゃあただの言い訳か。

実際、起きちまったし。


アユは啓太ってやつと出会って。

好きになって。


あんなに男っ気なかったアユが、簡単に恋に落ちたんだ。

きっと啓太には、俺にはない魅力がある。

アユを惹きつける、魅力が。




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