近くにいた王子
「光ー!」
次の日の放課後、
アユが笑顔で俺の元へと飛んできた。
「何?」
俺はまっすぐ、アユの顔が見れなかった。
少しぶっきらぼうに返す。
「K学園高校って……どこ?」
「はっ?」
K学園~!?
なんだよ、こいつはいきなり。
「K学園って、二駅向こうにある私立だろ? それがどうしたんだよ?」
「場所、教えてほしいの」
「なんで?」
そう聞くと、アユは少し頬を染めて答えた。
「啓太のね、学校なの。今日待ち合わせしてるから」
…聞かなきゃ良かったかも。
幸せそうなアユなんて、見たくなかった。
「K学園は、駅を右に出て………」
説明しかけて、止まった。
アユは物覚えが悪い。
教えたところで、覚えるわけがない。
「連れてってやろうか?」
ああ、俺ってどこまでも馬鹿だな。