近くにいた王子


楽しそうに話すアユと“啓太”。

そんな二人を、俺はぼーっと見つめていると。


「あれ、冴木ー!?」


後ろの方から、聞こえた声。

振り返ると、学ランの集団が歩いてきていた。

肩にはみんな、同じようなスポーツバックをかけている。


「お前確か、事故に遭ったんだよな!? 退院したんだな。良かった良かった」


長身の男は、“啓太”に親しそうに話しかけた。


「まだ部活には出れないけどな。多分2学期からは、復帰できると思う」


そう答える“啓太”に、男は嬉しそうに笑った。

けれどアユは、不思議そうに顔を歪めていた。


「啓太って、部活してたの?」

「あれ? 言ってなかったっけ?
俺、バスケ部だよ。筋トレしてたのも、そのためだし」

「聞いてないよー」


言い合いをする二人の横で、俺は“啓太”の言葉に反応していた。

バスケ部…?




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